その企業の商品・サービスに意味はある?
先日、文藝春秋カンファレンス「教養と経営」に参加し、独立研究家、著述家、パブリックスピーカーの山口周氏の特別公演「リベラルアーツを武器にする ~カオスの時代に求められる「しなやかな知性」とは?~」などを聴かせていただきました。
山口氏の著書は何冊か読んだことがありますが、今回の公演でも紹介されていた「役に立つ」から「意味がある」への価値源泉のシフトについての考察は株式投資においても役に立つのではないかと思います。
これは商品・サービスを、①「役に立たない・意味がない」、②「役に立つ・意味がない」、③「役に立たない・意味がある」、④「役に立つ・意味がある」の分類で考察するもので、携帯電話、自動車などの事例が紹介されております。
携帯電話の事例。携帯電話が普及し始めた2000年代、日本の大手電機メーカーは1年以内のモデルチェンジを繰り返して携帯電話を販売しておりましたが、そのほとんどは人々が機能価値を感じられるレベルを超えた競争で、②「役に立つ・意味がない」商品となっておりました。そこへアップルのiPhoneが登場。シンプル、スタイリッシュ、クールな外観とともに、スティーブ・ジョブズのカリスマ性、ストーリー性なども絡み、④「役に立つ・意味がある」商品となると、日本製品よりはるかに高価格にも関わらず、日本勢を一気に駆逐してしまいます。
自動車の事例。日本メーカーの多くは、やはり「快適で安全な移動手段」という機能価値を重視して②「役に立つ・意味がない」商品を展開しております。一方、ドイツのBMWはステータス感などの感性価値もあり、④「役に立つ・意味がある」商品で、イタリアのフェラーリなどは車高の低さ、フルパワーを発揮する機会がほとんどないエンジン搭載など、移動手段としては役に立つとはいえないものの、所有欲などを掻き立てることで③「役に立たない・意味がある」商品となっており、高価格商品として市場に受け入れられております。
株式市場に上場している企業の商品・サービスで、①「役に立たない・意味がない」のカテゴリーに当てはまるものはさすがにないでしょうが、多くの市場が成熟するなか、「役に立つ」軸での競走は早晩、価格競争に陥ることが予想されます。一方、「意味がある」軸(③、④)での商品・サービスを展開している企業は、価格競争に陥ることなく、高価格帯での販売により高い収益性を確保できる可能性があります。
例えば、
「4661 オリエンタルランド」
夢の国の体験は他のアミューズメント施設では代替しがたい「意味のある」ものではないでしょうか。
「6612 バルミューダ」
「役に立つ」軸での競走がメインになりがちな家電分野で、デザイン性の高さなどから「意味がある」軸を確立しているのではないでしょうか。
「8011 三陽商会」
すべてのアイテムを再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで作っているブランド「エコアルフ」を日本で展開しており、SDGsの面からも「意味がある」商品といえそうです。
投資先企業の商品・サービスに意味を見出すことができれば、投資はもっと楽しくなると思います。中長期スタンスで銘柄を選定する際には、その企業の商品・サービスに「意味がある」を考慮に入れてみてはいかがでしょうか。
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